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【NOSTブログ‣2026年5月 第1回】認定のための作業を、勝つための投資へ

…「健康経営優良法人」の認定は取った。
…順位も気にして取り組んでいる。
…しかし、社内の熱量は上がらず、経営層からは『これは本当に利益に繋がっているのか?』と問われる。

そんな悩みの正体は、自社の健康経営の設計図ともいえる「戦略マップ」が、経産省のサンプルや他社事例をなぞっただけの「写経」になっていることにあります。

本記事では、既存の枠組みを「健康経営1.0」と定義し、そこから脱却するための視点の転換を提案します。


目次

  1. 「認定のための写経」が招く形骸化
  2. 健康管理は「守りの責務」、健康経営は「攻めの投資」
  3. 経営者が「前のめり」になれない理由
  4. まとめ:「戦略マップ」の視座を引き上げる

1. 「認定のための写経」が招く形骸化

多くの企業において、健康経営が「認定マークを取得すること」自体を目的とした事務作業に終始している風潮がありませんか。

特に、本来は自社の健康経営の設計図(全体像)のはずの「戦略マップ」の作成において、ガイドブックのサンプルや他社事例をなぞったかのような、どの会社も似たような取り組みで「標準化」してしまっている弊害が目立ちます(社名を隠すとどこの会社の戦略マップなのか見分けがつきません)。

これを私たちは「健康経営1.0」と呼んでいます。

他社と同じように項目を埋めるだけの作業は、認定を取るには効率的ですが、自社の経営課題との結びつきが弱く、組織を変える力にはなりません。

2. 健康管理は「守りの責務」、健康経営は「攻めの投資

社員を健康に保つ(未病・予防)ことは極めて重要です。

しかし、それは「健康経営」という言葉が注目される前から、健康管理(産業保健)として、労働安全衛生法を含む法令遵守(コンプライアンス)を基盤とする、企業が果たすべき「責務」として存在しています(もちろん、責務の範囲を越えてさらに充実させている企業も多く存在します)。

本来の健康経営は「経営」そのものです。

従業員のウェルビーイングへの投資を、自社の成長や経営戦略の達成に繋げる「攻め」の領域です。

守りの「健康管理」をいくら強化しても、それだけで本業が強くなるわけではありません。

1.0の壁を破り、経営戦略としての2.0へ進化させる必要があります。

3. 経営者が「前のめり」になれない理由

「経営会議で、健康経営担当者から、特定保健指導の実施率やウォーキングラリーの参加率などを報告されても、どうコメントしたら良いのか戸惑う」というような経営者の声を、みなさんの周りでも聞いたことがありませんか?

経営者が健康経営に対して「前のめり」になれないのは、健診受診率などの健康テーマが、どう自社の将来の成長や付加価値に結びつくのか、そのストーリーが見えないからです。

一方で、担当者としてアサインされた産業保健担当者は、一人で健康経営度調査票と格闘して、経営者からは「もっと順位をあげるように」と指示されているケースも少なくありません。

健康経営が「総務や産業保健だけの取り組み」として浮いてしまっている現状は、経営者にとっても、担当者にとっても、不幸な状態です。

必要なのは、人的資本投資が経営成果を生むプロセスを、経営の共通言語で語り直すことです。

4. まとめ:「戦略マップ」の視座を引き上げる

健康経営優良法人の認定は、あくまで「通過点」です。

その先にある「本業を強くする」という本来の目的に立ち返ったとき、健康経営の「戦略マップ」は、「提出のための書類」から「自社のための設計図」へと変わります。

健康経営の設計図である「戦略マップ」を、いかに自社の経営戦略と連動させて描くか。

「戦略マップ」の視座の高さこそが、自社の健康経営の高さを決めると言っても過言ではありません。


次回は、【What:構造理解編】として、具体的にどのように「戦略マップ」の上で、自社独自のストーリーを描くのか。

NOSTが提唱する「戦略フロー図」を用い、経営の理想と現場の実践を繋ぐ「ナラティブ(物語)」の構築術について考えます。