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『健康経営のための仕組化~長期的な生産性向上の秘訣~』で講演しました

2024年3月18日開催の「ノストライフ×識学」の2社共催のセミナー『健康経営のための仕組化~長期的な生産性向上の秘訣~』で、当社代表の橘田が登壇しました。

当日は、ランチタイム・オンラインセミナーとして、「ちょっとためになる」という興味や、「それ、あるある」という共感を持っていただけるようなランチタイムをお届けしたい、という想いで対応させていただきました。

100社ほどの方にご参加いただき、活発な質問もいただきました。

当社のお話の概要

当社からは、健康経営をはじめとする「人を大切にする経営」の基盤となる「心理的安全性」を取り上げて、次のようなお話をさせていただきました。

  • 心理的安全性とは
  • 心理的安全性の必要性
  • 心理的安全性の高め方
  • 心理的安全性の調査方法(参加者企業様の組織における心理的安全性の実態調査方法)
  • 心理的安全性が健康経営をはじめとする「人を大切にする経営」にどのように関わるのか

以下、当日のお話のエッセンスをご紹介します。

職場で必要な心理的安全性とは

心理的安全性という言葉は、私生活でも使われるほど一般的になってきましたが、職場で必要な心理的安全性とは、サークル的な楽しさでも、衝突しない居心地の良さでもありません。

心理的安全性は、業績達成に向けたメンバー間の協力においてこそ必要になります。

職場(チーム)における心理的安全性とは次のように定義されています。
”チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクを取っても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと”
(エイミー・C・エドモンドソン)

具体的には次のようなチームの状態だと言えます。

  • みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる
  • 支援を求めたりミスを認めたりして対人関係のリスクを取っても、公式・非公式を問わず不利益を受けるような結果にならない・安全だと信じられる
  • 新しいアイディアが歓迎され、あてにされる

心理的安全性を高めるためにできること①

心理的安全性を、①話しやすさ(Openness)、②助け合い(Support)、③挑戦(Challenge)、④新才・異才歓迎(Diversity)という4つの要素(行動)に分解して、チームのメンバーがそれぞれの行動を増やすことで高めていくことができます。


※4つの要素に分解したアプローチは、石井涼介氏が著書「心理的安全性の作り方」で詳しく取り上げています。(4つの因子という表現をされています)

人は「承認欲求」を持っています。

承認欲求を満たす適切な言葉を掛けるコミュニケーションを通じて、それぞれの要素(行動)を増やしていくことができます。

セミナー内でも、4つの要素ごとに使ってみたい言葉を紹介させていただきました。

各社の働き方にマッチした言葉を使って、「心理的安全性オリジナルポスター作成」に取り組んでくことをお願いしました。

心理的安全性を高めるためにできること②

次に、各社(組織)における心理的完全性の状況を調査していただくことをお願いしました。

めざしたい姿(TO BE)を「心理的安全性オリジナルポスター」として明確にすると同時に、自社(組織)の心理的安全性の状況(AS IS)を把握することで、埋めるべきギャップ(TO DO)が明確になります。

心理的安全性の状況を把握する方法としては、心理的安全性の第1人者であるエイミー・C・エドモンドソン氏(ハーバード・ビジネススクール教授)が、研究過程で明らかにした「7つの質問」を使います。

組織間で比較して、高い職場と低い職場の違い(→設問間での違いを含む)を比較して、高い職場から学び、低い職場を高めるための対策を実施することができます。

同様に、会社がある施策を取った前後での調査結果を比較することで、その施策が心理的安全性に影響を与えたのか(→与えたとすればそういう影響か)を知ることも可能です。

心理的安全性と健康経営

当社(NOST)では、心理的安全性は、企業と社員の成長の土台となる必要不可欠なテーマであると認識しています。

心理的安全性が高い状況下においてこそ、1 on 1やOKRも本来の意図する展開ができ、ダイバーシティが発揮され、学習する組織をめざすことができます。

社員は、安心してリモートワークで働くことができ、休暇制度・休職制度の活用も含めたワークライフバランスが整った働き方が実現できます。

そして、その先に、「人を大切にする経営」としての健康経営などが本来の姿を発揮することができると認識しています。

心理的安全性を高めることは、健康経営の視点からは、メンタルヘルス発症リスクを減らすことに大変有効ですが、それ以上に、本来の健康経営がめざす「人的資本への投資」を「企業の成長」というリターンにつなげるためのカギとなる「社員のエンゲージメントの向上」にとって不可欠です。

健康経営の取り組みとして、良くあるケース

セミナー内では、健康経営の取り組みとして良く見られるケースを2つ紹介しました。

Case1は、「健康経営優良法人認定」という形を獲得することは達成したものの実態としては特段の変化がなかったことに対して、Case2は、形も実効も上がったので、一見すると成功したように見えますが、果たしてそう言い切れるでしょうか?

健康経営の目的(本質)は、社員に投資して、エンゲージメントを向上することで、企業の成長につなげるという経営戦略を展開して実効をあげることです。

Case2は、産業保健分野(健康管理)としては成功と言えますが、社員のエンゲージメント(=組織への帰属意識、仕事への貢献意欲・やる気)を向上する取り組みとして、実効性や効果をあげているでしょうか?

社員のエンゲージメントを高めて生産性をアップ

当社(NOST)では、お客様企業・団体のパートナーとなって、社員のエンゲージメントを高めて生産性をアップすることに伴走します。

そのために、コンサルティングサービス、研修ワークショップサービス、コンディションケアサービスの3つのサービス群を用意しています。

「人を大切にする経営」として、健康経営、人的資本経営、ウェルビーイング経営という言葉が流行っていますが、別々に形式的に対応するものではなく、共通する本質に注目して一貫して展開するものと考えています。

当社では、お客様企業・団体が、「人を大切にする経営」の入口ともいえる健康経営から一貫して対応いただけるよう、人を大切にする経営マップをお客様と共有しながら伴走していきます。

セミナー参加者からいただいた声

セミナーでは、30分という限られた時間に、以上のようなギュッと濃縮したお話をさせていただきました。

ご参加いただいた方からは、次のような声をいただきました。

  • 事業を拡げるタイミングで、悩んでいたことにちょうどヒットした
  • 自分の考え方が正しいと確認できた
  • 普段聞けないことが聞けた
  • 説明が判りやすかった
  • 一緒に色々と考えることができた(セミナーの流れに沿って考察できた)
  • 自分の理解・考え方と一致していた(自信が持てた)
  • 書籍で読んでいた内容と一致していた(まとまった話が聞けた)

また、5分という大変短い時間でしたが、次のような質疑応答もさせていただきました。

※当日は急いだ回答となりましたので、この場を借りて今一度整理しました。汎用化した表現としています。

【Question】

セミナー内で説明があった、めざしたい職場(チーム)の姿は、「心理的安全性」と「業績基準」との2軸で理解するということはわかりましたが、「心理的安全性」の軸だけで見れば、居心地が良い(ヌルイ職場)でも心理的安全性が高いと言えませんか?

つまり、冒頭のAチームとBチームの例で言えば、居心地が良いAチームは、心理的安全性が高いが業績基準が低いチームということになりませんか?

【Answer】
ご指摘の通り、2軸での組み合わせで表現した「ヌルイ職場」、つまり、冒頭のAチームに該当する場合も、心理的安全性については高いチームと言えます。
ですが、本日のセミナー内でお話してきたように、「有能なチームの特性」「成果を上げるチームの特性」として研究されてきた意味での心理的安全性が高いチームとは、Bチームのことを指すことだということをご理解いただきたいと思います。
私たちが普段、私生活で感じる心理的安全性の意味(狭義)は、「居心地の良さ」と置き換えても良いかもしれません。
すると、「居心地の良い」×「業績基準が高い」=「ビジネスで言う心理的安全性の高いチーム」というご理解をいただけると思います。

【Question】
対人関係のリスクがあるから(=無知・無能・邪魔・否定的と思われたくないから)、自分の思っていることが言えなくなるという話ですが、どんな言葉をかけたら、無知・無能と思われることを避けられるでしょうか?

【Answer】
「対人関係のリスク(4つの不安)」と、「対人関係のリスクを感じて沈黙してしまう理由」を見てみましょう。

例えば、「無知」だと思われたくない不安には、「こんなことも知らないのか」と思われたくない気持ちがあります。
その結果、「わかったふりをする」「質問や相談をしないで過ごす」という行動になります。
ですので、相手の仕事が進んでいないと思われる場面では、「一体何が判らないのですか?」ではなく、「止まっているところはどこですか?」という言葉をかけてはみてはどうでしょうか?
また、相手に安心して相談できると思って欲しい場面では、「相談してくれてありがとう。一緒に考えてみよう。」という言葉はいかがでしょうか?
どんな言葉を選ぶべきかについては、正解も定型もありませんが、4つの不安、背景に潜む気持ち、不安によってどんな行動を取ってしまうのか、ということへの理解を深めていただくことで、適切な言葉を見つけていくことができると思います。
ぜひ、ご自身の職場やチームにフィットする言葉を見つけてポスターにしていただけると嬉しいです。

「対人関係のリスクを感じて沈黙する理由(原因)」は、沈黙することで得られる効果を、「自分」が「今すぐ」に「確実」に感じることができるからです。
一方、対人関係のリスクを乗り越えて発言した場合に、発言することで効果を得られるのは自分ではなく組織であり、効果が表れるタイミングも確実性も不確定だからです。
ですから、対人関係のリスクを乗り越えて発言しやすくするためには、発言した人をその場で認める(→発言してくれたことを歓迎する、発言する人が評価される、但し、発言内容に同意することは必ずしも必要ではない)ことで、発言することが組織のためにも自分のためにもなるというチーム運営をすることが大切です。
そして、発言した内容は放置せずに、他のメンバーはどう思うのかという建設的なコミュニケーションを展開していくことが大切です。
まさに、そうしたチームが「心理的安全性が高いチーム」です。
自分達のチーム内で守りたいルールをきちんと確認・共有していくことが大切です。

【Question】
心理的安全性の大切さや取り組みについて理解したが、Googleなどの一部の会社のことなのでは?
いざ、取り組むとなる大変なのでは?
業績基準を明確にして、業績達成に向かってチームメンバーが気兼ねなく発言して建設的に協力していくこと以外に何が必要になりますか?

【Answer】
この質問は、頻繁にいただくことがあるので、FAQとして用意している次のスライドを使ってお答えします。

「Googleなどの欧米企業向けの取り組みなのでは?」という質問の背景には、「日本的な良さが無くなるのでは?」という気持ちがあると思われます。
欧米企業と日本企業の特徴をステレオタイプ的に分類してどちらが優れているのかを論じるつもりはありませんが、「当社は、いままでの日本企業的なマネジメントをこれからも続けていくことで良いのか?」ということを考えていただくことが大切だと思います。
言いたいことを言える心理的安全性を大切にする組織(チーム)を目指すことは、個人を大切にして、一人ひとりが自分らしく生きられる風土を目指すということですが、こうした風土を持つ企業の方が「人に優しい」と言えるのではないでしょうか?
一方、滅多なことでは解雇されない代わりに、周囲の雰囲気に合わせて忖度する、あるいは、細かなルールや規定による画一性を求めるという風土を持つ企業の方が「人に優しくない」と言えるのではないでしょうか?
(セミナー内では、そうした風土を持つ組織での不正事件の事例も見てきました。)

タテ社会での社員の同質性・均一性を前提として戦っていくのか、あるいは、ヨコ社会での社員の多様性・創造性を前提として戦っていくのかは、個々の会社・団体の事業内容やビジネスモデルも踏まえて、経営者の視点での判断になります。

心理的安全性はカルチャー変革です。
そうしたカルチャー変革が必要だと思う企業・団体では、出来るところから少しずつでも取り組むことが大切です。
このセミナーでのお話が少しでも役に立てば幸いです。

※当日のセミナーの様子をブログ風にお伝えしました。ご質問・ご不明の点など、何なりとお問い合わせいただければ幸いです。伴走する姿勢で一緒に考えていきます。