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「病気ではない」から、「肉体的・精神的・社会的な健康」へ

自分自身や周りの大切な人達が健康であることは、私たちの誰もが望むところです。

そして、国全体にとっても重要な政策となっています。2013年から行われている国民健康づくり運動「健康日本21(第2次)」では、「全ての国民が共に支え合い、健やかで心豊かに生活できる活力のある社会の実現」をめざすと記されています。

それでは、私たち自身が、そして、私たちを取り囲む職場を含めた社会として、「健やかで心豊かな生活」を送るためには、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか?

単なる病気ではないという状態に留まらず、昨今、注目される「ウェルビーイング」の観点から、肉体的・精神的・社会的にも良好な状態であるために必要なことについても考えていきましょう。

健康づくりのためにやっていることは?

まず、ビジネスパーソンが健康づくりのために意識していることから見ていきましょう。

こちらのグラフは、20歳~59歳の男女ビジネスパーソンを対象に行われた、健康づくりに関する調査結果です。

TOP5にフォーカスして掘り下げてみます。

①歩く・階段を使う

「意識的に体を動かしたり、スポーツをしている」という運動習慣を身に着けることができれば、高血圧や糖尿病、骨粗鬆症、虚血性心疾患などの罹患率や、死亡率を低くすることにつながることが分かっています。また、運動習慣は体だけでなくメンタルヘルスにも良い効果をもたらします。

健康づくりのために必要とされるエネルギー消費量は1日に約300kcalです。アメリカスポーツ医学協会が提示する式を用いて300kcalを消費する歩数を計算すると1万歩になります。このことから「1日の目標数値=1万歩」が設定されています。

歩くことはカロリー消費だけでなく幸せホルモンである「セロトニン」の分泌も活性化させます。セロトニンはストレスを軽減し気分を落ち着かせます。また、歩くだけに限らず他の運動で相当量のカロリーを消費できれば、疾病の予防も期待できます。

通勤時や、会社内でのフロアの移動の際に、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使うことは、運動のための時間が取りずらいビジネスパーソンにとっても、思い立った日からできるエクササイズです。階段を上るときは平地を歩く時の3~4倍のエネルギーを消費するともいわれています。身体の中でも大きな太ももの筋肉をつかうことでのダイエット効果も期待できます。また、足先をあげることでの躓き防止効果もあります。階段を見たら「チャンスだ!」と思ってくださいね。

※ウォーキングの効果を高める方法については、「効果的なウォーキングのための5つのポイント」を、ぜひ参考にしてください。

②タバコを吸わない

喫煙は「百害あって一利なし」と古くから言われています。喫煙はがんや脳卒中、虚血性心疾患のリスクを高めます。また受動喫煙による健康被害も看過できません。ストレス発散やコミュニケーションツールとしての観点もありますが、「禁煙」が賢明です。

また、喫煙をすると活性酸素が増えるので、肌を老化させます。肌の老化は肌荒れや、顔のシミ・シワなどの原因に。さらに、体内のビタミンの代謝が高まるので、疲れやすさを感じるなどの「ビタミン欠乏症」になりやすいです。

また、喫煙をする本人だけではなく、職場の方や家族を含めた「受動喫煙」が大きな問題となっています。喫煙者の権利を不当に制限することを求めるものではありませんが、「望まない受動喫煙」を無くすことは事業者の責任であると共に、社会全体で取り組むべき課題です。

※加熱式タバコや電子タバコによる健康被害については、まだ分からないことが多く、安全性が保証されている物ではありません。

③手洗い・うがいをする

手洗い・うがいの必要性は、コロナ禍における健康づくり(予防)の習慣としてクローズアップされました。

「手洗い・うがいをしないとどうなる?」のブログで詳しく解説していますので、ぜひ、ご覧ください。

④睡眠をしっかり取る

睡眠は質と量どちらも大切です。7時間程度の睡眠が理想だとされており、質の高い睡眠が取れているほど、風邪をひきにくいというデータもあります。充分に良い睡眠が取れていると、集中力もアップし仕事の効率も高まります。

また、睡眠中は体を休めるだけではなく、ホルモン分泌、記憶の整理などが行われています。アルツハイマー型認知症の一因とも言われる「アミロイドβ」の除去も睡眠中に行われます。認知症の心配はまだ早いと感じる方も多いかもしれません。しかし、アミロイドβの蓄積は認知症発症の20年前から始まります。睡眠不足が、続かないように心身ともにケアが必要です。

⑤健康診断を受ける

健康診断の実施は会社の義務であると共に、従業員にとっても健康診断を受診することは義務ですが、「定期健康診断」の検査項目を超えたガン検査などのオプション検査の実施や、再検査の実施がポイントとなります。

健康診断で「有所見」となった場合は、経過観察となるケースの他に、要再検査となるケースがあります。再検査となった場合は、企業は従業員に対して再検査の受診を促す努力義務があります。(参考:有所見率は50%を超えています)

先ほどのグラフで「定期的に健康診断を受ける」と回答している方は、健康を害したことがある人ほど多い状況です。転ばぬ先の杖として、早期に発見する、さらには、未然に防ぐという取り組みこそが大切ですね。

企業によってはオプション検査の費用、特に、人間ドックの費用の一部負担をする動きも広まってきています。ぜひ、健康であることを確認する定例イベントとして「定期健康診断」を迎えていただきたいと思います。

本当に「健康」と言えますか?

WHO(世界保健機関)では、「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定義しています。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

ここに書かれているWell-beingが、私たちが頻繁に耳にするようになった「ウェルビーイング」です。

肉体的な健康|うやむやにしていませんか?

健康と聞いてはじめにイメージするのが、肉体的な健康ですが、「このぐらい大丈夫」「まだまだ平気」と、うやむやなままにしている症状はありませんか。

・高めの血圧や糖尿病予備群の状況

・肩こりや腰痛、膝の痛み

・睡眠不足

このような症状を、そのままにしておくとどうなるでしょうか。

今はギリギリセーフの血圧も、生活や食事を見直さなければさらに高くなる可能性があります。その結果、動脈硬化が起こり脳出血や脳梗塞のリスクが高まるでしょう。また、糖尿病はサイレントキラーとも呼ばれ、気づいた時には症状が進んでおり、怖い合併症が起こることもあります。

体の痛みには、何らかの疾病のサインや、筋肉量の低下によるものがあります。筋肉量が低下による心配はロコモだけではありません。代謝が落ち肥満につながり生活習慣病の原因にもなるのです。

◉改善方法

「運動・休養・栄養」を見直しましょう。運動には様々な種類があります。一人で簡単にできるストレッチや、仲間と楽しむスポーツ。楽しく続けられるものがオススメです。

夜更かしをせず、睡眠時間をしっかりと確保しましょう。寝る直前の食事は控え、3食バランスよく食べましょう。血圧や血糖値が気になる方は、野菜や魚を中心に高タンパク・低カロリーの食事を心掛けましょう。

精神的な健康|サインを見逃していませんか?

精神的な健康は、単に心の病気でないという事だけではありません。肉体に問題があるようで、実は精神面に起因している不調もあります。

・やる気/自信が無い

・食欲がない

・眠れない/過眠

何をするにもダルくてやる気が出ない。失敗しそうで不安、自信がない。また、強いストレスによる、食欲不振、不眠や過眠といった睡眠のトラブル。このような状態は健康といえるでしょうか。このような状態では注意力も散漫になり、仕事でもミスをしかねません。

◉改善方法

1日の運動量が少ないと夜になっても眠くならず、睡眠不足になりがち。睡眠不足が続くと、気分も落ち込んでしまいます。睡眠がしっかりと取れるように生活リズムを整えましょう。

散歩などの有酸素運動は気分をスッキリさせ、エネルギーを消費するので、食欲の回復にも期待ができます。スマートフォンの使用も時間を決めて適切に使用するようにしましょう。

いづれも症状が深刻な場合は医療機関に相談しましょう。

社会的な健康|周りの人との関係はどうでしょうか?

周りの人とのとポジティブな関係が築けていることが、社会的に健康であるということにつながります。

・相談相手がいない/職場で孤立している

・役割がない

自分自身は職場との関係は良好と感じていても、職場の中に孤立している人がいる場合は、良好な職場環境な関係といえるでしょうか。人付き合いの距離感は個々人ごとにそれぞれですが、必要な相談もできないような関係性であれば、ビジネスもスムーズにはいきません。

人間は「社会的動物」とも言われています。長寿との因果関係としては、「タバコを吸わない」「アルコールを飲み過ぎない」よりも、「社会とのつながりの種類や量が多い」ことの方が、影響度が高いというデータもあります。また、コロナ禍においてメンタルヘルスが増えた一因として、孤独感があげれれています。

◉改善方法

上司の方には、「この職場では自由に発言できる」という雰囲気を作っていただくことが大切です。また、同僚の様子を気にかけたり、「何かできることはありませんか」と自ら役割を買って出ることでポジティブな関係づくりに踏み出していただければと思います。

周囲から必要とされ、自らの役割を持ち、社会の中に居場所があると感じられる状態こそが「社会的な健康」です。生きがいがあり、周囲の人と支え合う。そんな職場づくりを会社ぐるみで取り組んでいきたいものです。

まとめ

健康はゴールではありません。「ウェルビーイング」に近い言葉に「ハピネス」がありますが、ハピネスが「瞬間的な幸せ」であるのに対して、ウェルビーイングは「持続的で多面的(肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態)な幸せ」を指します。

「幸福学」で知られる慶応義塾大学院の前野隆司教授によれば、幸福度が高く持続できている従業員はそうでない従業員に比べて、次のような特徴があるというデータが示されています。

  • 創造性が3倍高い
  • 生産性が31%高い
  • 売上が37%高い
  • 欠勤率が41%低い
  • 離職率が59%低い
  • 業務上の事故が37%低い

従業員のウェルビーイングの追求こそが、従業員にとっても、企業にとっても、Win-Winの関係づくりのカギを握ります。

【NOSTからのメッセージ】

NOSTは、企業と従業員に伴走する健康経営支援サービスを展開しています。

NOSTが提供する「オンラインレッスン」は、オンライン上でお互いのことを思いやりながら一緒にコンディショニングケアをするライブの空間です。肉体的・精神的・社会的な健康を実現するための場としてご利用いただけるように運営していきます。