社員が抱えている昨今のストレス事情と企業の取り組みのポイントについて、産業医として第一線の現場で活躍していらっしゃる米田先生にお話しを伺いました。

NOSTは「ハタラク社員のストレスケアが進む社会」を目指していますが、米田先生が産業医をなさっていて感じる最近の社員のストレスの変化について教えてください。
「手がしびれる」という症状を訴えて、脳神経外科にかかる人が増えています。鞄を持たなくなることで握力が下がった人が多く発生しています。このような不調もコロナ禍での働き方の変化の副作用の一例です。心身の不調の信号は出ているものの、今すぐ生活できなくなるというほどの深刻さに至らないといった「黄色信号」が広がっています。











ボディーブローのように少しずつ効いていく不調に対してどうやってストップをかけるか…。
そうなんです。私も最初の内は、「毎朝着替えて、30分でも60分でも一旦は家から出てからテレワークをスタートする習慣を身に着けていただけませんか?」とアドバイスをしていましたが、今では、「絶対にそうしてください。」という言い方にしています。「リズムづくり」や「習慣化」ということに意識を持って取り組まないと、いつかは必ず壊れます。
社員の食を通しての健康としては、Googleの「社員食堂をタダにする」という取り組みが有名ですね。ジャパネットたかたでは、会社が指定する飲食店での食事代を会社負担にしたり、コロナの職域接種でも、ビジネスパートナーや近隣地域にも門戸を広げているという話は、医師仲間からも流石だという評価です。そういった企業としての意思をもったトップの姿勢こそが、社員の健康にとって非常に大切です。











「定期健康診断」や「ストレスチェック」の導入といった横にらみ的な対応に留まるのか、それとも企業のトップ自らが「資産」としての社員を本気で大切にするのかの違いが大きいということですね。
私の知り合いの産業医からは、「休職する手前で救ってくれたら、その社員の年収相当を産業医の先生に払う」と断言しているトップもいるという話を聞きました。社員の一人ひとりの健康の価値を判っている経営者ですね。











社員の「休業」に伴う企業の経済的損失だけでも給与の3倍と言われています。社員ご自身の人生や、ご家族を含めた社会に与える影響は計り知れず、発生した後では取り戻せないからこそ、未然に防ぐことが大切ですね。
自社の利益だけを最大化するという考え方は、もはや通用しないと思います。企業にとっての一番大切な「資産」である社員の健康に係る費用は、目先の利益の最大化を優先するコストミニマムではなく、継続的な成長のために必要不可欠な投資なのではないでしょうか?











企業はキャッシュを回して大きくなるだけではなく、社員への健康投資を回して大きくなってこそ社会の一員として尊敬されるというお話しですね。本日はありがとうございました。


米田吉位先生
内科・東洋医学科・在宅医療
<好きなもの>
自転車・スキー・乗馬・雪駄・ウイスキー・アロハシャツ