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【NOSTブログ‣2026年4月 第3回】経営層を動かす「共通言語」の作り方。3つの市場(ステークホルダー)へ「価値」を届ける
——【COMMON LANGUAGE:共通言語編】健康経営を「戦略的ナラティブ」へ昇華させ、味方を増やす

前回は、健康経営度調査票の最重要設問であるQ17・Q33*(経営戦略との連動)において、単なる参加率といった「アウトプット(反応)」を追うのではなく、組織にどのような変化をもたらしたいのかという「アウトカム(実り)」を定義する重要性についてお伝えしました。
しかし、定義した「実り」が事務局のPCの中に眠ったままでは、組織を動かす力にはなりません。
最終回となる今回は、その実りをいかにして「3つの市場」のステークホルダーへ語り、健康経営を「福利厚生」から「経営の武器」へと昇華させるか。
その共通言語化の技術、そして「ナラティブ」の重要性について紐解きます。
*Q17・Q33:健康経営度調査票の大規模法人部門Q17/中小規模法人部門Q33の設問。自社の経営戦略に基づき、健康経営を通じてどのような価値(KGI)を創出するかを明記する。
目次
- 「健康」を「ステークホルダーの利益」へ翻訳する
- 3つの市場(資本・労働・競争)へ届ける一連の「ナラティブ」
- Q17・Q33を、組織を動かす「最強の武器」にする
- まとめ:事務作業を卒業し、真の「経営のパートナー」へ
1.「健康」を「ステークホルダーの価値」へ翻訳する
産業保健の現場で使われる「健康」という言葉は、経営者や外部のステークホルダーにとっては、しばしば「守り」や「コスト」と捉えられがちです。
ステークホルダーに働きかけ、共感と信頼を引き出すためには、「健康」の言葉の解像度を上げ、「翻訳」を施さなければなりません。
ここでの「健康」とは、単なる不調の不在を指すのではありません。
本来のウェルビーイング、すなわち「Well(健康)」な状態が「Being(習慣化・状態化)」している姿を指します。
特に重要なのが「社会的な健康」です。
周囲から支えられているという実感、確かな居場所があり、ここでなら成長できるという感覚。
この「社会的な健康」を含むウェルビーイングこそがワーク・エンゲージメントの源泉であり、産業保健的な施策(守り・コスト)を、社員の成長や生産性向上に直結する「攻め・投資」へと昇華させる「翻訳」の鍵となります。
2. 3つの市場(資本・労働・競争)へ届ける一連の「ナラティブ」
健康経営は、健康管理(産業保健)の枠を超えた「経営」です。
経営とは、ステークホルダーに語りかけ、ステークホルダーからの共感と信頼を勝ち得ることで自社の成長に結びつけることです。
彼らを動かすために不可欠なのは、健康そのものを語ることではなく、前回定義した「実り(アウトカム)」を、それぞれの市場が求める価値へと翻訳し、”一連の物語(ナラティブ)”として提示することです
■資本市場(株主・投資家・金融機関)へ
健康投資がいかに将来の財務成果に繋がるか、論理的な「成長の仕込み」をナラティブとして証明します。
それにより、「将来の売上・利益の源泉が着実に構築されており、持続的な成長が期待できる会社だ」という評価を獲得します。
■労働市場(求職者・社員)へ
ビジョン達成に向けて社員の幸せに投資する「約束」を示し、強固な信頼関係を築くナラティブを紡ぎます。
社員が「知人にこの会社を自信を持って勧めたい」と感じ、求職者が熱望する組織へと導きます。
■競争市場(顧客・取引先)へ
社員が活き活きと働く姿そのものを、ブランドへの「信頼の証明」というナラティブとして提示します。
顧客や取引先から「この人たちが提供するサービスなら安心だ」「ぜひパートナーになりたい」と選ばれ続ける理由になります。
3.「自分への投資」を、自社の成長戦略の達成に繋げるQ17・Q33を、組織を動かす「最強の武器」にする
Q17・Q33といった調査票の設問は、単なる提出書類として設定された枠ではありません。
本来は、ステークホルダーに対して「わが社が何に投資し、どのような果実を得るのか」という設計思想を、自らの意志を乗せて力強く宣言する、最強のコミュニケーションツールです。
産業保健スタッフが得意とする「守り」のデータを、経営が求める「攻め」の物語へ。
この「共通言語」を持って、自律的に「ナラティブ」を語り始めたとき、事務局は初めて事務作業の枠を飛び出し、経営のパートナーへと進化します。
4. まとめ:事務作業を卒業し、真の「経営のパートナー」へ
調査票全体を鳥瞰し、アウトカム(実り)を追求し、それを市場の価値へと翻訳する。
これこそが、他社との僅差を競う「標準化」のゲームを抜け出し、自社独自の「100社100様の健康経営」を実現する唯一の道です。
新年度、あなたの語る「ナラティブ」が、組織の未来を動かす力になることを願っています。
3月度までの連載と今回の「設計思想」を統合する、【編集後記】もあわせて公開しています。私たちがなぜ、この「一貫性」にこだわるのか、その結びの言葉をお読みください。
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